環境と伝統産業を合わせて学ぶ

(公財)京都伝統産業交流センターと京都市(京エコロジーセンター)の共同開催による「環境×京都の伝統産業・伝統工芸体験ワークショップ」が202112月から222月まで各月1回ずつ、計3回にわたって企画されました。その第1回目、1226日に京エコロジーセンターで実施された午後の部を取材に伺いました。

この日は、京こまづくり体験をメインに、地球環境や地球温暖化の現状、SDGsなどについて参加者への質問を交えた話が両センターの職員からあったほか、伝統工芸士の方から京こまについて解説がありました。

参加したのは、小学校低学年から中学生までの子どもと保護者の10組。ワークショップ開始を待つ間、会場脇に設けられたスペースに置かれた様々な種類の京こまで思い思いに遊ぶ子どもたちの姿が見られました。

地球の現状と環境問題について参加型講話を通して考える

ワークショップは3部構成で実施され、最初に地球環境と伝統産業に関する講話がありました。地球には多くの生き物が共生していること、地球温暖化が進んでいること、海中のごみが増え続けていることなど、地球の現状についての説明が職員からありました。また、参加者への問いかけに対しては、子どもたちから積極的に発言があり、環境問題や持続可能な社会に対する意識の高さがうかがえました。

IMG_3431_R

京こまに込められた意味を知る

そして、製作体験に入る前にこの日の指導者である京こま職人の中村さんから話がありました。まず、現在は京こまを作っているのが中村さんの工房だけだとの話がありました。そして、独楽遊びが「物事が円満に回る」という意味や、独楽の芯になぞらえて「芯がある人になる」という意味、また独楽柄が同心円状に輪が広がっていることから「人の輪が広がる」という意味などがあり、凧揚げや羽根つきとともにお正月の縁起の良い遊びであることが紹介されました。もうすぐお正月ということもあり、参加者は昔ながらのお正月遊びについて見直すきっかけとなったようです。

また、京こまは、現代のおもちゃの主な素材であるプラスチック製ではなく、布を使って作ること、さらには、もともと京こまは着物の端切れを使って安土桃山時代ごろに誕生したものであることから、エコロジーやリサイクルの観点からも価値のある工芸品であるとの説明がありました。

IMG_3444_R

京こまづくり体験と独楽講話で理解を深める

次はいよいよ製作体験です。まずはこま本体の部分の材料となる紐選びから。紐(木綿製の平紐)は幅1センチほど、長さは1.8~2メートルほどのサイズで、1本ごとに色が異なります。今回の体験では、合計4本の紐を順番に独楽の軸に巻き付けて作り上げていきます。子どもたちは各々好きな4色を選択。中村さんからは、「最も外側に来る紐の色が、独楽の表情の決め手となるため、一番お気に入りを最後に巻くように」との指導がありました。

次に巻き方について説明を受けた後、実際に作り始めました。子どもたちは黙々と紐を独楽軸に巻いていき、1本目を巻き終わって糊で止めた後、2本目、3本目と作業を進めていきました。巻き方が不ぞろいになってしまった際は、中村さんから巻き直しのお手本を見せてもらうなど、職人技を間近に見ることも。最後の4本目を巻き終わり、次の工程となる全体を糊でコーティングする作業へと進めました。

ecosen-kyokoma01_R

最終工程となるコーティングは、作業後に糊を乾燥させる時間を要することから、その間に中村さんから京こまや独楽についての話をしていただきました。独楽が古代オリエント発祥で4千年前の独楽が見つかっていること、日本に伝わったのは6世紀頃であるとことなど歴史とルーツ、独楽の名前の起源や種類、江戸時代の独楽の遊び方など、約30分にわたって講話がありました。手作りのパネルも使った中村さんの話に、子どもたちは熱心に耳を傾けていました。

講話が済んで糊もいい具合に乾いたころに、各人それぞれ色合いの異なるオリジナル京こまが完成。専用の小さな赤い毛せんの上に載せて記念撮影をする親子の姿があちこちで見られました。

ecosen-kyokoma02_R

職人の思いと願いに触れ、京こまの価値を再認識

講話の中では、ものづくりを仕事とする職人としての思いが語られる場面もあえりました。「忙しい生活の中でも独楽を回すことで、安らぎやひらめきといった人々の感性に働きかけるようになってほしい」「何十年と歳を重ねた後でも、独楽を回すことで昔を思い出し、人と人をつないでほしい」という願い、さらには、「海外に行く際には、日本の昔ながらのおもちゃである独楽を介してコミュニケーションを図ってほしい」と願いながら、地味な作業を要する京こまづくりに励んでいるとのことでした。単なる遊び道具だけではない価値を見出してほしいとの願いを込めたメッセージが伝えられました。

このワークショップを通じて、参加者からは、「最初は難しかったけれど、進めるうちに楽しくなっていきました」「家にも京こまがあったけれど、このような作り方でできているとは知らなかった」という感想が上がっていました。

今回のワークショップを通して、参加した子どもも大人も、普段目にすることがなかったり、あまり意識しない存在だったりした京こまに込められた意味や職人の思いを通して、単なる遊び道具だけではない価値に新たに気づくきかっかけとなった様子がうかがえました。

職人さんの手による形や大きさ、柄も様々な京こま
MENU
PAGE TOP