京都の伝統工芸を体験する機会として、公益財団法人京都伝統産業交流センターの主催、一般財団法人三洋化成社会貢献財団の支援による「令和6年度 京の匠の技を知る!子ども伝統工芸体験」が、会場となった東福寺大慧殿(京都市東山区)にて実施されました。
小・中学生を対象に、4日間のうち前半2日間は京七宝、後半2日間は京扇子の制作体験が行われました。1日2部制で各回子ども約20名と保護者が参加。当記事の取材には、8月4日13:30~15:00の京扇子の回に訪れました。
講話の後はいよいよ制作体験。この日は「87回職人の手を通る」といわれる京扇子の工程のうち、仕上げの工程となる「地吹き」と「中附け」という作業を子どもたちが体験しました。
作業に使う扇の地紙は、あらかじめ5つの絵柄の中から子どもがそれぞれ1つ選んだもので、既に3枚の紙を職人の手によって貼り合わせた加工済み。そして、その紙と紙の隙間に息を吹き入れて、通り道となる穴を広げる「地吹き」の作業では、「息を吹き込むときになるべく唾で紙を濡らさないように!」との指導を受けながら、子どもたち各々が息を吹き入れる音が会場に広がりました。
地吹きの次は、扇子の骨となる扇骨を地紙の穴に挿し込んでいく「中附け」にチャレンジ。竹を1本1本細く薄く削って仕上げられた扇骨は、竹串より細く、また18本の中骨を小さな穴に挿し込んでいく作業に、保護者の方が見守る中、子どもたちが集中して取り組む様子があちらこちらで見られました。苦労する姿も多く見られ、協同組合の方のサポートを受けながら参加者全員が作業を終えました。達成感を得るとともに、日頃同じ作業をスムーズにこなす職人の技術や苦労を思った子もいたことでしょう。
なお、今回の中附けは、本来事前に塗っておく糊は付けない「空刺し」の体験ということで、最後は伝統工芸士による仕上の工程が行われました。子どもたちは、目の前で見る職人技に興味津々。糊付けして形を整えて仕上げていく作業中の職人の手元に、顔を近づけて見つめる姿も見られました。
職人による仕上げ作業に入ったところで、投扇興の体験コーナーが設けられ、希望する子どもたちが順番に挑戦しました。
投扇興は江戸時代頃に始まったとされる日本の伝統的な遊びで、「枕」と呼ぶ台に乗せた「蝶」という的に扇子を向けて投げて、扇子が着地した格好と、枕と蝶の位置関係などの状態によって、あらかじめ決められた得点が入るルールで行われます。
挑戦する子ども1人につき5枚の扇子が渡され、1枚ずつ投じて投扇興を楽しむ様子は、楽しみながらも真剣そのもの。高得点を出して大喜びする姿も見られました。
1時間半ほどの体験を通して、京扇子の歴史や種類、用途や仕組み、制作工程の一端や伝統文化の一面に触れた子どもたちと保護者の方々は、京扇子の魅力がより身近に感じられるようになったことでしょう。